冬の到来
先月、初雪が降った。例年よりも結構早い初雪だった。そのうえその日の晩はうっすらと雪
が積もり、まだ夏タイヤを履いていたバイト先の車で出陣するということが恐ろしかった。
なにせ運転経験が浅い。とったのは去年の7月の話だ。冬道も1シーズンしか経験していない
のだ。去年はたまたま前半に雪が少ない年だったので、さほど苦労することもなかったが、
今年はまだわからない。
近所を見回してみても、山々はもう葉をほとんど散らせ、すっかり冬の景色になってきた。
鮭のシーズンも終わり、今はハタハタの漁が行われている。冬というのは魚介類がうまい。
特にそれは北に行くほど顕著で、やはり寒さ対策で脂肪を蓄えるからであろう。北海道の冬
の味覚といえばハタハタ、ホッケ、カジカ、マダラなど、鍋の材料には事欠かないのだ。
個人的主観だが、特にタチのうまさはその中で群を抜いている。タチというのは、タラの白子
のことで、マダラのタチをマダチと呼び、スケソウダラのタチをスケダチと呼ぶ。味は断然
マダチのほうがうまい。見た目はすごいグロテスクだが、鍋にしてもいいし寿司もおいしい。
どちらかというと寿司とかのほうが、濃厚でねっとりとしたタチの味を味わえると思う。
鮭の白子とかよりもクセがないので、苦手な人でもおそらく食べられるのではないだろうか。
しかしそんな中でも、味噌汁に使うなら断然スケダチだ。若干水っぽさがあるスケダチなのだ
が、味噌汁に入れるとその旨みをぐっと引き出してくれる。
ホッケは、もはや全国区の魚であるが、そのしっかりとした魚体を見たことがないとないと
いう人も結構いるのではないだろうか。とれる所ではスーパーでも生で売っているが、多くは
開きで出回っている。見た目的にはアブラコ(アイナメ)と似ている。種類的にも近い。
違いといえば尻尾の形状が一番の違いだろうか。平筆のようになっているのがアブラコ、
切れ込みが入っているのがホッケである。
ホッケは、晩秋から春にかけて岸寄りし、北海道になくてはならない魚である。漢字で書くと
魚扁に花と書く。主にとれるのはマホッケとシマホッケであるが、味はマホッケがやはりうま
い。シマホッケはどちらかというとロシア産のものが多く出回っている印象を受ける。
そのほかにも住んでいる場所によってネボッケ(根に潜んでいるホッケ。通常は回遊してい
るものが多いため分類されている)と呼んだり、産卵を終えてやせ細ったものをロウソクボッケ
と呼んだりもする。この時期は全道各地でホッケ釣りが盛んになり、投げ釣りやウキ釣り、
ルアーなどで狙う人が多い。多いときは3桁、クーラーが満杯になるくらい釣れる事もあり、
沖釣りなどでは外道の代表格となっている。
食べ物ばかりでなく、周りの自然にも、冬独特の光景が見られる。氷点下15℃くらいにな
ると、空気中の水蒸気が凍りだす。その粒は目を凝らさないとなかなか見えないものなのだ
が、光が反射するとキラキラと輝いて、とても幻想的だ。知っているかと思うが、ダイヤモンド
ダストである。そんなに珍しい現象でもなく、年内に何度か見ることができる現象である。
また、ダイヤモンドダストが一定の条件になったとき、太陽の光を規則正しく反射して、光の
柱を作るサンピラーという現象もあるのだが、これはなかなか見れるものではない。名寄あた
りが一番有名なポイントなのだが、見たことはない。
湖などでは、凍った湖面の一部が盛り上がり、一筋の道のようになる御神渡りというものも
見られる。何年か前には、不凍湖と言われていた支笏湖が凍り、支笏湖で御神渡りが観測
された。
このように冬の北海道というのは実に自然の恵みが多い。先住民族であるアイヌの人々が、
この厳しい冬を乗り越えてこれたのも、きっとこの自然の恵みのおかげであろう。そしてその
乗り切るための知恵や技術は、脈々と、ただ細く受け継がれている。
話がずいぶんと飛躍してしまったが、今年の冬は、寒くなく、積雪も少なくあってほしいとい
うのが実際のところだろうか。 |